うさぎとわんわん

ある昼下がり、私は、間違いをというか、これもまた違うのだが

私たちと言ったほうが正しいのかもしれない。

「ひるまじゃん」

朝はやくおきないと怠くなるから。

知ってたよ、だから時間を返して欲しかった。

そんなに簡単に帰ってこないよ。死んだら、

「まあ、たいへんだねぇ」

おばあちゃんの調子はいつもの事だ。おばあちゃん・・

肌寒くなってきたのでコートを羽織り、私たちは外にでた。

 

おばあちゃんの口癖は「どうせ」と「ボケちゃって忘れるのよ」

小さい頃からゆるやかに変化する。

優しくて大人しいおばあちゃんは、これから何を忘れていくのだろう。

「この街はいつも曇りだね」

 

はやく起きてお散歩したい。

わたしのゆめ。

これがなかなかできなくて、悔しくて、曇りのせいにする。あなたのせいにもする。

 

車に乗って晴れてくれ、ビューーン

 

 

———9月

 

目が覚めた。少し夢をみていたようだ。

がたんがたん、揺れる。揺れる。

身体は横になっている、天井が白い。光がまるい。

 

ここはどこだ。

 

身体は横になっている、天井が白い。光がまるい。

身体は横になっている、天井が白い。光がまるい。

身体は横になっている、天井が白い。光がまるい。

骨だ。

 

 

「ようやくクソ暑い夏が終わったね」

「まあいいか、いつもと変わらん夏だった」

 

 

 

わたしはひとり、いつか終わる夢。

だから雪も降る、薬も降る、チョコレートも。

雨が降る。黒よりももっと真っ黒。ああ。あああああああ。

 

 

害をたくさん吸い込んだ。吐き出した。真っ赤だった。

これは、なんでしょうか、なんなんでしょうか。

 

間違えた。

 

がたんがたん、揺れる揺れる・・・

揺れる揺れる・・・

 

お手紙を書こうと思います。これは誰に宛てたものでもない。

自分の年頃はかなりピンクの白より尤も欲が強いものへ。

 

 

   とっても気分が良いぞ、これはきっと現実だバレバレなんだ。

   いい天気です、拝啓お元気ですか 幸せですか。

   嘘はよくないぞ、騙されないぞ、素敵な時間へようこそお帰りなさい。

    私の思っていることは、それぞれ違っていますが、が

   きみたちが見ているものははたして本物かな、それが生きた証かな。

   それでもいいけど、生きている今はもう今じゃないって、

   そんな話はどうでもいいけど、結局いつも同じことを選択している。

   結末は一つに収束する。それがこの世界の理だったりしたりして。

 

 

「そろそろ着くよ」

 

「ほら、起きて」

 

 

がたん、がたん

揺れる・・・揺れる・・・

 

わたしは、いまどこにいる。今は何日の何時何分だ。

 

ここは海が見える、潮風が肌に直接当たって、とても、寒い。

マフラーを貸してください。あと、コートも。

砂の山を作っている、きみだよ。きみだよ!

 

歩く足があってよかった。口もあった。よかったぁ。

 

 

 

 あの時の海。

海は寒い、海はきれい、海はこわい。

 

暗い雲が近づいてくる。

あっというまに雪が降り出した。

 

「秋に雪が積もるのは50年ぶりだ」

 

遠くに見える、やっと赤く染まったもみじも真っ白。

この道をくだってくだってくだって......

 

わんわんの呼吸!

 

聞こえ始めた私のわんわんの生きているかんじ。

 

雪が多いところを進んで歩いて、こっちを向いてにやにやする。

犬って大きく笑う。人より感情はストレートで輝いてる。きれいだ。

 

今、私のわんわんはきっと海を怖がり、なるべく端っこを歩いてるんだ。

冷たくてふわふわした現実を体で受け止める。笑いながら。

 

海は寒い、海はきれい、海はこわい。

あなたがいなくてさみしい。

 

地面を這いずりまわっている。イキモノ。

わんわんとうさぎは可能性の塊だった。弱みを知らなかった。

人間なんてちっぽけですね。かなり気持ち悪い。

かくいうぼくも人間でした。青い空が綺麗だな。

 

 

こうやって、あなたを求めている。見つけて欲しくて。

どこにいるの、どこにいるの。 

あなたは、どこにいるの。